GW明けから、鉄道弘済会義肢装具サポートセンターに入所した。
目標は杖無しで日常生活できるレベルになること。
杖無しにこだわったのは理由があった。
杖を持っていると片手が塞がる。
何かもう片方の手に持ち物があれば、杖と持ち物で両手が塞がってしまう。
そこで雨が降った場合、傘が持てない。
手が塞がらないリュックやショルダーバッグを持つという手段もあるが、スーツの時にリュックやショルダーバッグは嫌だった。
なので、杖無しで歩けるようになることを目指した。
その目標を理学療法士、梅澤さんと岩下さんに伝えた。
自分の身体を見て言われた。
「筋肉質で細身。義足履くには理想的な体型」と。
ここまでやってきたリハビリの成果もあっただろう。
やはり前の病院でやってきたことは無駄じゃなかった、と思った。
義足は臼井二美男さんに担当して頂けることになった。
義足を見てもらったが大阪で作った義足はよくできていて、調整はほとんど必要なかった。
調整で悩むことなく、歩行のリハビリに集中できたのはありがたかった。
リハビリ開始初日。
歩きを診た梅澤さんは、問題をすぐに見抜いていた。
能力的には杖無しで歩けるレベルに達している。
杖に頼ってしまっていて、杖無しになると恐怖心が起こってしまうことが問題だと。
そこで梅澤さんは(なぜそんなものがあったのかわからないが)園芸用の支柱を持ってきた。
全く体重を支えることなどできない細い棒。
「これで歩いてみて」と。
杖を棒に持ち替え、歩いてみると。
棒は地面に触れる程度。
それでもバランスを崩すことなく、杖をついているのと同じように歩けた。
「ほら。体重かけてないでしょ?依存心があるだけ。」
その説明には説得力があり、納得した。
それから棒を離して、何も持たずに歩いてみると。
歩けた。
あんなに悪戦苦闘していた杖無し歩行。
それがリハビリ開始初日にできるようになった。
何も持たずに練習し、その日のうちにかなり歩けるようになっていた。
嬉しかった。
自分の脚と義足、2本の脚だけで歩けたことが本当に嬉しかった。
それから全く杖は要らなくなった。
さらに梅澤さんに頂いたアドバイス。
「義足を信じて乗れ」
今では、これは義足歩行の極意だと思っている。
凄いなと思うとともに、さらに高いレベルを目指したいと思った。
入院生活はここで終わる。
日常生活、会社への復帰に向けて、やり残すことがないように残りの期間ここで何をするべきか考えるようになった。
(続く)
切断〜復帰経過:まとめ
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